非定型歯痛:「脳の中でおこる痛み」

「口腔顔面痛を治すーどうしても治らない「歯・口・顔・あごの痛みや違和感」がわかる本」を参考に記事を書いていきます。

痛みの種類

体の痛み

体の痛みには、体が傷ついておこる痛み(侵害受容性痛み)と神経そのものが傷ついておこる痛み(神経痛)があります。これらの痛みは、原因が比較的にはっきりしているので、適切な治療を受けたり、神経痛に効くお薬を飲めば、比較的簡単に痛みをコントロールすることができます。

脳の中でおこる痛み

脳の中でおこる痛みは、患者さんが、痛みを訴えるけで、それに見合う体の異常がみつからないときの痛みです。

いくらCTやマイクロスコープで検査をしても、虫歯もないし、歯周病もないし、歯の亀裂もなくて、診断がつかない。でも、患者さんはつらい痛みが続いていて困っている。

これらの痛みは、我々歯医者を悩ませます。

抜髄をしても、抜歯をして、痛みは取れるところか、原因だと思っていた歯が抜歯してないにもかかわらず、痛みが消えないと訴える。

いま、このような原因不明の痛みを説明してくれる概念が「脳の中でおこる痛み」です。

痛み」は、「痛みの刺激」が、電気信号に変換されて、神経線維に乗って、脳に伝わることで感じます

「痛みの刺激」は歯の神経によって電気信号に変換され、脳に伝わって、「歯が痛い」と感じるのです。

痛みの刺激が脳に伝わる過程で、脳のさまざまな場所で加工されて、加工された痛み情報が終着点(大脳皮質)で「痛い」と感じます。

痛み情報を加工するシステムが狂ってしまうと、通常なら全く痛い感じないはずの「痛みの刺激」でも、耐えられない痛みと感じることがあるんだそうです。

1)痛みの種類

痛みをコントロールする脳のシステム

脳には、痛みの刺激を加工するシステムがいくつかあります。その痛みの刺激の加工がうまくいかないと、「脳の中でおこる痛み」が発生するのです。

痛みを増幅したり抑制するシステム:脳幹網様体 vs 下行性疼痛抑制系

末梢から入った痛みの刺激を強めたり(脳幹網様体)、弱めたりする場所(下行性疼痛抑制系)があり、痛みの刺激を弱めるところが働かなくなると、痛みを強く感じます。

特に、痛みが長引くと、下行性疼痛抑制系がだんだん働かなくなり、脳幹網様体の活動が優位になり、痛みが非常に増幅されて、耐えられないほどの痛みを感じるようになります

痛みを認知したり修飾するシステム:大脳辺縁系

大脳辺縁系という脳の場所は、痛みを加工するところです。痛みによる不安や怒りなどの感情を引き起こしたり、痛みの意味づけなどをするんだそうです。

また、大脳辺縁系に痛みの刺激が伝わると、過去の痛みや苦悩の体験と結びつけることで、痛みを増強したりします。

そして、大脳辺縁系は、痛いに対する意味づけもします。痛みの刺激に対して、「この歯の痛みのせいで苦しくて自殺したいくらいだ」、「歯の痛みせいで何事も集中できない」などと、ネガティブの意味づけをします。

また、ストレスによって、大脳辺縁系が過剰に活性化されると、痛みの刺激に対して、過去のつらい経験やネガティブな感情を結びつけることで、痛みを増強します。

痛みや感情を調節するシステム:セロトニン系・ノルアドレナリン系

脳内では、神経伝達物質とよばれるものを神経が出すことで、痛みの刺激などの情報のやりとりをしています。

神経伝達物質の中でも、セロトニンを使う神経系とノルアドレナリンを使う神経系は、脳幹網様体・大脳辺縁系などに深く関わっています。

このセロトニン系とノルアドレナリン系の神経ネットワークがうまくいかないと、痛みの感じ方が変になります。

ちょっとした痛みを耐えられない痛みと感じたり、何も原因がないのに痛いと思ったり、なんらかの違和感が消えなかったりします。

2)痛みをコントロールする脳のシステム

以上、痛みについて勉強してみました。

私が興味を持っている非定型歯痛は、脳の中でおこる痛みでしたね。

痛みの刺激が、脳を通過する際に、情報が加工されて、その情報が大脳皮質に伝わってはじめて痛みとして感じることになりますが、脳を通過する際に、情報の加工が狂ってしまうと、いわゆる原因不明の慢性痛に悩まされるわけです。

歯の慢性痛である非定型歯痛は、非常に治療が難しそうですが、以前記事にも書いた「トリプタノール」という三環系抗うつ薬が効くので、大脳辺縁系が異常に活性化されて、極端な思いをされている方は、ぜひ試してください。

あとは、痛みにとらわれないマインドチェーンジーが必要ですね。

それでは、今日は以上です!

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