今回は、根管治療の時期による特徴をみてみます
目次
根管治療は、はじめて行うか、再び行うかで、その成功率が違ってきます。
実際どんなものでしょうか?
イニシャルトリートメントとは、根管治療を今まで行なったことがない歯に対する根管治療です。
虫歯菌が歯の神経(歯髄)まで到達して、歯髄が強い炎症を起こしている(不可逆性歯髄炎)、もしくは歯髄が壊死しているときに行います。
歯髄が生きている場合(血流がある)と死んでしまっている場合(血流がなくなっている)があります。
歯髄が生きている場合は、細菌感染がまだ根の先端まで及んでいないので、根管治療の高い成功率が望めます。(成功率9割以上)
歯髄が死んでいる場合、根の尖端まで細菌感染が及んでしまっていることがほとんどで、根の尖端に膿が溜まっていることが多いです。
ということは、根管の隅々まで、細菌が住み着いている可能性がありますので、根管の消毒をシビアにやらないと、細菌が残ってしまう可能性が高いといえます。
なので、同じイニシャルトリートメントでも、歯髄が生きている場合に比べると、成功率は少し下がるといえます。(成功率8〜9割)
ラバーダム、マイクロスコープ、超音波洗浄(PUI)など、しっかり精密で無菌的な根管治療が要求されます。
再根管治療になるってことは、言い換えると、以前の根管治療が失敗しているってことになります。
なので、治療の成功率は、イニシャルトリートメントに比べて、当然低いです。(成功率6〜8割)
再根管治療の成功を難しくする要因は、
1)以前の根管充填材をしっかり取り除かないといけない
2)根管の隅々まで細菌感染が及んでいる
3)治療が繰り返されているので、歯が薄くなっていて、歯根破折のリスクがさらに高い
などが挙げられます。
まず、再根管治療では、根管内をしっかり消毒するために、以前の治療で詰めた根管充填材をしっかり取り除かないといけないですが、この作業が非常に難しいです。
肉眼で根管充填材が取れたかどうかは絶対にみえなくて、やはり、マイクロスコープの拡大視野下で取る作業を行わないといけません。
一生懸命根管充填材を取った後は、以前の治療で消毒が不十分だったところがなかったかみつけて、しっかり消毒してあげないといけません。
なので、歯科用コーンビームCT(三次元レントゲン)を撮影して、根の形を確認すると確実かと思います。
また、長期予後の面で不安になるのが、歯根破折です。
どうしても、一度以上治療がされている歯なので、治療の繰り返しによって、歯が薄くなっていて、歯の強度がだいぶ落ちてしまっていることが多いです。
なので、咬合力への耐久性が弱くなっていて、歯根破折を起こすリスクが高くなってしまいますし、歯根破折は、根管治療の失敗の原因の多くを占めています。
また、以前の根管治療の質が高いにもかかわらずレントゲンで根尖病変がみられる場合、再根管治療による成功の可能性はかなり低くなります。
再根管治療でダメなら、次は抜歯?
ですが、次の治療の選択肢として、まだ外科的歯内療法があります。
実際、再治療も2つに分類することができて
1)正方向非外科的再治療 orthograde non-surgical retreatment : 通常の根管治療による再治療
2)逆方向外科的再治療 retrograde surgical retreatment:外科的に根尖部にアプローチして行う再治療(通常、歯根端切除といいます)
なので、再根管治療でも治せなかったとしても、まだ歯根端切除によるワンチャンスがあるのです!
今回は、イニシャルトリートメントと再根管治療の成功率についてみてみました。
同じ根管治療でもコンセプトが若干違うことがわかります。
そして、再根管治療の難しさも、成功率の低さを通じてわかりました!
今日は以上!
*根管治療の成功率のデータは、1990年の古い文献のままで、意外に最新の論文では同じ様な比較はみつからないですね、マイクロスコープ、CBCTによる三次元画像診断、洗浄技術などによって、治療技術も向上して、昔よりは成績率はアップしているんじゃないかと思います、Sjogrenさんの論文では根尖病変のある再根管治療は68%とかなり低いデータでしたが、現在の根尖病変のある再治療の成功率は7〜8割とみればいいんじゃないかと思います。結論としては、再治療はやっぱり難しいということです。
(参考文献)
Factors affecting the long-term results of endodontic treatment, U Sjogren, J Endod. 1990