この記事は、歯の詰め物・被せ物の素材、どれにする?その①の続きです。
前回の記事では、金属とセラミックについて述べてみました。
また、おさらいですが、歯科で使える素材を3つに分類すると、
- 金属:金合金、金銀パラジウム合金
- セラミック:ジルコニア、イーマックス
- レジン:コンポジットレジン
があります。
なので、今回は、レジンについてみてみましょう!
目次
レジンは、合成樹脂やプラスチックともいわれますが、
たくさんのモノマーが化学反応でつながって(重合反応)、ポリマーを形成して、強度のあるものに変わります。
歯科のつめものやかぶせものの素材として使われるレジンは、コンポジットレジンcompoiste resinといわれ、噛む力に耐えられる強度を持たせるために、レジンの中に、フィラーを混ぜて補強しています。
フィラーを混ぜることで、
- 噛む力で壊れにくくする(機械的強度の向上)
- 歯と詰め物の間に隙間ができにくくする(重合収縮の軽減)
- 噛み合わせですり減りにくくする(耐摩耗性の工場)
- お口の中の温度変化に影響を受けにくくする(熱膨張・収縮の軽減)
コンポジットレジンの臨床的メリットとしては、
- 白くて、歯の色に合わせられる
- 光で固めることができて、便利
- 歯を削る量が少なくて済む
コンポジットレジン修復は、型を取って虫歯の穴を詰めるのではなく、お口の中で直接詰める方法で、
「コンポジットレジン直接法」、「ダイレクトボンディング」とも言われます。
コンポジットレジン修復の最大のメリット、「歯に接着させる」ところです。
この歯の接着システムによって、歯の修復法には革命が起きました。
以前のインレー修復のように、修復物が取れなくするための工夫をしなくてもよくなったので、わざわざ歯を大きく削らなくても良くなりました。
歯を極力小さく削って詰める、コンポジットレジンによるMI修復(Minimal Intervention)が提唱されるようになりました。
コンポジットレジン修復の手順を見てみると、
- 虫歯だけを取る
- ラバーダム防湿を行う
- 歯の接着剤を塗る
- コンポジットレジンを詰める
- コンポジットレジンを固める
最近の歯の接着剤は、とても簡単で、1つの種類の接着剤で、接着操作が終わるのが当たり前になっていますが、
少しこだわり出すと、2つか3つの種類の処理剤が必要になることがあります。
私が行っている歯の接着手順としては
- エナメル質に対して、リン酸エッチングを行う
- 象牙質に対しては、
- 次亜塩素酸ナトリウム処理:象牙質(のスメヤー層)の有機成分を除去する
- 還元剤処理:酸化象牙質コラーゲンを還元して、酸化物による接着阻害を防ぐ
- プライマー処理:HEMAやMDPなどの歯質接着性モノマーを象牙質に染み込ませる
- ボンディング剤処理:象牙質表面の強固なコーティング層形成(樹脂含浸層形成)
で、接着強さと接着耐久性を狙って、少し煩雑でも、こういう手順で接着処理を行ってから、コンポジットレジンを詰めていきます。
コンポジットレジンを、被せ物に使うこともできます。
コンポジットレジンをあらかじめ固めて作ったブロックを、CAD/CAM技術で削り出して、被せ物を作る方法があるのです。
保険適応にもなっていて、保険診療では通常「CAD/CAM冠」といっています。
最初は強度的な不安の声もあって、不評でしたし、今でも最終修復物としてあんまり認めない先生もいますが、白くて保険適応の安価な素材として、患者さんにとってはとても受けが良いのも事実です。
一応、白い被せ物として使われる素材の機械的強度(曲げ強さ)を比較してみると、
- ジルコニア:約1000 MPa
- イーマックス(IPS e.max プレス):約470 MPa
- イーマックス(IPS e.max キャド):約360 MPa
- コンポジットレジン(カタナアベンシアPブロック):約265 MPa
です。
だいたい、業者が公表しているチャンピオンデータだと思いますが、単純比較でみても、保険のCAD/CAM冠の材質であるコンポジットレジンブロックは、少し強度が弱いことがわかります(それでも思ってたよりは強度がありましたね)
実際、患者さんが保険のコンポジットレジンとオールセラミックで迷われるときには、とりあえず保険でやって、もし割れたりしたら、ジルコニアなどの高強度オールセラミック素材をお勧めしています。
今回は、金属・セラミックに続く3番目の材質として、レジンについてみてみました。
レジンだけでは強度がないので、フィラーを含有したコンポジットレジンについての記事になりました。
歯のつめもの、かぶせものの素材、どれにする?①と②で、ご自身の歯に入れる歯の素材選びに役に立つと良いですね!
それではまた!