歯の詰め物、被せ物の素材、どれにする?その②

この記事は、歯の詰め物・被せ物の素材、どれにする?その①の続きです。

前回の記事では、金属とセラミックについて述べてみました。

また、おさらいですが、歯科で使える素材を3つに分類すると、

  • 金属:金合金、金銀パラジウム合金
  • セラミック:ジルコニア、イーマックス
  • レジン:コンポジットレジン

があります。

なので、今回は、レジンについてみてみましょう!

コンポジットレジン:白いプラスチック

レジンは、合成樹脂やプラスチックともいわれますが、

たくさんのモノマーが化学反応でつながって(重合反応)、ポリマーを形成して、強度のあるものに変わります。

歯科のつめものやかぶせものの素材として使われるレジンは、コンポジットレジンcompoiste resinといわれ、噛む力に耐えられる強度を持たせるために、レジンの中に、フィラーを混ぜて補強しています。

フィラーを混ぜることで、

  • 噛む力で壊れにくくする(機械的強度の向上)
  • 歯と詰め物の間に隙間ができにくくする(重合収縮の軽減)
  • 噛み合わせですり減りにくくする(耐摩耗性の工場)
  • お口の中の温度変化に影響を受けにくくする(熱膨張・収縮の軽減)

コンポジットレジンの臨床的メリットとしては、

  • 白くて、歯の色に合わせられる
  • 光で固めることができて、便利
  • 歯を削る量が少なくて済む
コンポジットレジン修復①:白くて、歯の色に合わせられる
コンポジットレジン修復②:歯を削る量が少なくて済む

コンポジットレジン修復は、型を取って虫歯の穴を詰めるのではなく、お口の中で直接詰める方法で、

「コンポジットレジン直接法」、「ダイレクトボンディング」とも言われます。

歯の接着剤を塗って、歯の穴に直接詰める

コンポジットレジン修復の最大のメリット、「歯に接着させる」ところです。

この歯の接着システムによって、歯の修復法には革命が起きました。

以前のインレー修復のように、修復物が取れなくするための工夫をしなくてもよくなったので、わざわざ歯を大きく削らなくても良くなりました。

歯を極力小さく削って詰める、コンポジットレジンによるMI修復Minimal Intervention)が提唱されるようになりました。

左:コンポジットレジン修復、右:インレー修復、インレー修復は、詰め物が取れなくするために、大きく削らないといけないが、
コンポジットレジン修復は、歯を少なく削って済む

コンポジットレジン修復の手順を見てみると、

  • 虫歯だけを取る
  • ラバーダム防湿を行う
  • 歯の接着剤を塗る
  • コンポジットレジンを詰める
  • コンポジットレジンを固める

最近の歯の接着剤は、とても簡単で、1つの種類の接着剤で、接着操作が終わるのが当たり前になっていますが、

少しこだわり出すと、2つか3つの種類の処理剤が必要になることがあります。

私が行っている歯の接着手順としては

  • エナメル質に対して、リン酸エッチングを行う
  • 象牙質に対しては、
    1. 次亜塩素酸ナトリウム処理:象牙質(のスメヤー層)の有機成分を除去する
    2. 還元剤処理:酸化象牙質コラーゲンを還元して、酸化物による接着阻害を防ぐ
    3. プライマー処理:HEMAやMDPなどの歯質接着性モノマーを象牙質に染み込ませる
    4. ボンディング剤処理:象牙質表面の強固なコーティング層形成(樹脂含浸層形成)

で、接着強さと接着耐久性を狙って、少し煩雑でも、こういう手順で接着処理を行ってから、コンポジットレジンを詰めていきます。

被せものにも使えるコンポジットレジン

コンポジットレジンを、被せ物に使うこともできます。

コンポジットレジンをあらかじめ固めて作ったブロックを、CAD/CAM技術で削り出して、被せ物を作る方法があるのです。

保険適応にもなっていて、保険診療では通常「CAD/CAM冠」といっています。

最初は強度的な不安の声もあって、不評でしたし、今でも最終修復物としてあんまり認めない先生もいますが、白くて保険適応の安価な素材として、患者さんにとってはとても受けが良いのも事実です。

一応、白い被せ物として使われる素材の機械的強度(曲げ強さ)を比較してみると、

  • ジルコニア:約1000 MPa
  • イーマックス(IPS e.max プレス):約470 MPa
  • イーマックス(IPS e.max キャド):約360 MPa
  • コンポジットレジン(カタナアベンシアPブロック):約265 MPa

です。

だいたい、業者が公表しているチャンピオンデータだと思いますが、単純比較でみても、保険のCAD/CAM冠の材質であるコンポジットレジンブロックは、少し強度が弱いことがわかります(それでも思ってたよりは強度がありましたね)

実際、患者さんが保険のコンポジットレジンとオールセラミックで迷われるときには、とりあえず保険でやって、もし割れたりしたら、ジルコニアなどの高強度オールセラミック素材をお勧めしています。

今回は、金属・セラミックに続く3番目の材質として、レジンについてみてみました。

レジンだけでは強度がないので、フィラーを含有したコンポジットレジンについての記事になりました。

歯のつめもの、かぶせものの素材、どれにする?①と②で、ご自身の歯に入れる歯の素材選びに役に立つと良いですね!

それではまた!

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